こんにちは~チェリーです。
今回はマーティン・スコセッシ監督の「アイリッシュマン」を紹介します。
スコセッシ監督といえば、「タクシードライバー」や「グッドフェローズ」などの映画史に残る名作を生んだ偉大な映画人。
近年も「ヒューゴの不思議な発明」、「ウルフオブウォールストリート」など、人々を惹きつける作品を果敢に生み出してきました。
前作は遠藤周作の小説を原作とした「沈黙」でしたが、あれは監督の作品の中でも色々と異例でしたよね~
今回の「アイリッシュマン」は、技術や製作の面で新たなチャレンジを取り入れつつも彼の集大成とも言える作品と評判が高いです。
全編三時間三十分の超大作ですが、観る価値は絶対にアリ!!
この映画をオススメする人
あらすじ
全米トラック運転組合のリーダー:ジミー・ホッファの失踪、殺人に関与した容疑をかけられた実在の凄腕ヒットマン:フランク“The Irishman”・シーランの自伝的物語。全米トラック運転手組合「チームスター」のリーダー、ジミー・ホッファの不審な失踪と殺人事件。その容疑は、彼の右腕で友人の凄腕のヒットマンであり、伝説的な裏社会のボス:ラッセル・ブファリーノに仕えていたシーランにかけられる。第2次世界大戦後のアメリカ裏社会で、ある殺し屋が見た無法者たちの生き様が描かれる。
感想
ちょこっと解説
この映画は2004年に発表されたチャールズ・ブラントのノンフィクション小説「I Heard You Painted Houses」が原作となっています。
スコセッシ監督はこの本に出会って感銘をうけ、長らく構想を練っていたそうです。
この本は、アイルランド系アメリカ人であり、イタリアンマフィアのために暗殺者を務めたフランク・シーランという男の回想録という形をとっています。
そして、冒頭の「家をペンキで塗った」というのは「俺がジミー・ホッファを殺した」という自白の暗喩なんですね。
ジミー・ホッファって誰?
「いや、そもそもジミー・ホッファって誰?」という話ですが……
彼は労働組合指導者として、60年代のアメリカで非常に人気の高かった人物です。
作中でも「ビートルズと同じく、彼の名を知らない者はいなかった」とまで言われています。
そんなジミーですが1975年の7月にデトロイトで突然消息を絶ってしまったのです。
警察も捜査しましたが結局見つからず死亡扱いに。マフィアとかなり深くかかわっていたことから「ギャングに殺されたのでは?」と推測する人もいます。
労働者層(特に男性)に支持されたこと、マフィアと繋がりを持っていたこと、また演説での喋り方といい、今のトランプ大統領を彷彿させるところがありますね~
他にもケネディ大統領(アイルランド系)とイタリアンマフィアとの繋がりなど、アメリカ史の裏側をさくっと見せてくれている本作。
観た後に色々調べると面白いですよ~
77歳のおじいちゃんの挑戦
これまでに数々の名作を世に送り出してきたスコセッシ監督。今年のアカデミー賞授賞式のポン・ジュノ監督のメッセージからもわかるように多くの人々に愛され尊敬されている映画人であります。
それだけに自分のこだわりや映画への愛も人一倍なスコセッシ監督ですが、本作では新たな試みに挑戦しています。
まず本作はNETFLIXオリジナル映画であり、劇場公開されなかったこと。(監督が、「本作は家の小さいテレビで何度も観るために作った」と言っています。)
その代わり、全編三時間三十分、製作費1億5千万ドル超えという条件をNETFLIX側がのんでいます。
また、俳優たちを若返らせるためにILM製の特殊なカメラを使って撮影し、あとからCGで映像を加工しているんですね。
作中ではかなりの時間が経過するのですが、キャラクターが徐々に老いていく様子を自然に再現しています。
ただ、顔は若返っても体の動きに老いを感じるところが改善の余地ありですね。
アホなのにプライドの高い男たち
本作にはいろ~んな実在のマフィアや政治家の男性が出てくる訳ですが、彼らを全くカッコよく描いていません。
主人公のフランクはラッセルとジミーという二人のボスの間で右往左往するのですが、いつもイマイチ自分の立ち位置がわかってなくてアホっぽいです。そのくせ、マフィアとかかわりを持った途端、家族のためと称して一般人に暴力をふるうようになります。
(そんな父親をいつも冷ややかに見つめる娘のペギーが印象的でしたね。)
ジミー・ホッファにしても、自分もマフィアの助けを借りて勢力を拡大してきたのに、相手から何度「最終通告」をされても自分の地位と繁栄は揺るがないと信じてる。
そしてラッセル。マフィアの親玉として長年裏社会を牛耳っていましたが、結局刑務所のなかで寿命を迎えるのでした。
その他の連中も初登場の際に頭の上に死因が表示されちゃ全然威厳なんかありません笑。
「監督と出演陣が語るアイリッシュマン」でスコセッシ監督は「技術はどんどん進歩していくが、大事なのはキャラクターだ。」と言っています。
一人一人のキャラクターの人生を濃密に、けれど皮肉たっぷりに描いた本作に、そんな監督の映画作りの姿勢を感じることができました。