㊗️第24回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」受賞🎉
— トーチweb (@_to_ti) April 28, 2020
高浜寛さんの『ニュクスの角灯』が大賞受賞‼️😭
高浜さん本当におめでとうございます😭
受賞を祝して第1巻分を全話無料公開しますので、未読の方も既読の方もぜひお読み下さい😭https://t.co/Yk1EC7L7nQ#ニュクスの角灯 #高浜寛 #手塚治虫文化賞 pic.twitter.com/eJWjWiOaMw
漫画「ニュクスの角灯」が手塚治虫文化省「マンガ大賞」受賞!おめでとうございます!
ということで、まだこの漫画を知らないかたのためにその魅力を紹介しようと思います。
舞台は日本に諸外国の最新の文化や技術が流れ込んできた明治時代。
主人公の少女美代が、先進と享楽の都パリからやってきた夢の品々に触れ、少しづつ変化し成長していく様を描いた、美しく切ない人間ドラマです。
華やかでロマンチックな雰囲気をまとった本作ですが、時折現代の私たちにも通じる鋭い目線を感じさせます。
作者の高浜寛はキャリア初期から海外(特にフランス)での評価の高かった方で、画風や作風も独特なタッチがあります。
このマンガを読んで皆さんも新しい漫画の世界に触れてみてください!
あらすじ
西南戦争で父を亡くした少女美代は、叔父夫婦の家のある長崎に引き取られたが、引っ込み事案な性格もあってなかなか暮らしに馴染めない。
ある時、美代の不思議な能力を見込まれ、輸入物店「蛮」で働くことに。
一風変わった店主の百や周りの大人たちと交流するうち、美代の人生は大きく変わっていって……。
触れた物の未来が見える 不思議な少女と、先進と享楽の都・パリから やってきた夢の品々を巡る、豊潤なる人間ドラマ。
感想
「美しく楽しかった時代」
この物語は1945年の熊本の空襲シーンで始まり、1878~1879年の長崎とパリでの出来事を描いた後、最終的に再び冒頭の時代へと戻ります。
作者の高浜寛は、取材中に出会った長崎のアンティークショップから、この物語の着想を得たそうです。幕末から明治にかけて流れ込んできた品々に触れて、若い女性が成長する楽しい話にしよう、と。
しかし、長崎そして熊本という土地柄、彼女の人生には戦争による影が投げられたはずであり、それを無視して「楽しい話」をかくことはできないと思ったそう。
なので晩年の美代が過去を回想するという構成をとったのですね。
高浜寛のレトロな画風がノスタルジックな物語にマッチしていて、その分切ない気持ちにさせられます。
個性豊かな登場人物たち
最初、美代は親を亡くした自身のない少女にすぎませんでした。
「何か役に立たないと意見をきいてもらえない」と思い込んでいて、なかなか心を開けない。
その美代が、色々な品物に出会い、人間味のあふれる周囲の大人たちに背中を押され、自ら海外へと飛び出す決意をするまでになるんですね。
後に「蛮」で働くことになった少年・民平に指導し、憧れられる立場になるところからも彼女の成長が感じられます。
他の人に幸せの手助けをできるようになった美代の人生が、1879年以降も幸せなものであったことを願いたくなります。
その美代の人生を大きく変えたのが「蛮」の店主の百でした。
少々複雑な生い立ちを背負い、悲しい恋を引きずっている彼ですが、普段はそんな素振りを見せず飄々と振舞っています。
途中から彼がもう一人の主人公をなって、舞台はパリに移ります。
その他にも、強面だけど優しい百の養父の岩爺、百の実母で実業家の大浦慶、美代の姉御分となる・たま、高級娼婦としての生活に溺れるジュディットなど様々な大人が登場します。
皆それぞれに過去や悩みを背負っているのですが、それに静かに耐えて生きています。
彼らの人生が交差し、互いに影響を与える様が浮き出ているのもこの作品の特徴ですね。
文化の交差点・長崎から華の都パリへ
当時に市井の人々の生活や、海外に紹介された「ジャポニズム」の特徴まで、綿密な取材に基づいて描かれているのでとても面白いし勉強になります。
一般の市民にも洋服が出回り始めた経緯とか、浮世絵に当時の欧米人がかなり驚いていたこととか……。
長崎は古くから諸外国との貿易の拠点だったので、様々な文化が持ち込まれたわけですね。同じ時代でも、東京を舞台にした作品とはまた違った風情があります。
また、このころのパリは最先端の技術と文化が集まった場所ですから、欧米で人気の高まっていた日本文化を百たちがここに紹介するのも納得。
こういう作品を読んでいると、意外に日本の文化について全然知らないことがたくさんあると気づかされるのですよね~。
作者紹介
筑波大学芸術専門学群卒で、就活の時期に書いていた漫画「モン・サン・ミッシェル」で雑誌「モーニング」の佳作を受賞しました。
早くから海外で評価を受け、著作の多くはフランス語訳がでています。また、著名なバンド・デシネ作家のフレデリック・ポワレとのコラボ経験あり。
他の作品は「蝶のみちゆき」「四谷区花園町」「エマは星の夢を見る」など。
最新作は「ラマン」。フランスの作家マルグリット・デュラスの小説をコミカライズしたものです。1929年のフランス領インドシナを舞台に、現地の貧しいフランス人少女と、金持ちの華僑の青年の関係を描いた作品です。
新作「扇島歳時記」がトーチwebにて無料で読めるようになりました。本誌と少し遅れで更新されます。この機会に是非! https://t.co/1eeR8GGvxB
— 高浜寛/Kan Takahama (@kan_takahama) May 1, 2020
現在の連載作品は「扇鳥歳時記」。
「ニュクスの角灯」「蝶のみちゆき」にも登場したたまの思春期を描いた話です。
今トーチWebで無料公開しているので気になった方はぜひよんでください!