CHERRY PICK LIFE

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エンタメ大好きな医大生によるブログ

映画「アイリッシュマン」~スコセッシ監督の集大成~

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出典 https://www.imdb.com/title/tt1302006/

こんにちは~チェリーです。

今回はマーティン・スコセッシ監督のアイリッシュマン」を紹介します。

スコセッシ監督といえば、タクシードライバーグッドフェローズなどの映画史に残る名作を生んだ偉大な映画人。

近年もヒューゴの不思議な発明」、「ウルフオブウォールストリート」など、人々を惹きつける作品を果敢に生み出してきました。

 

前作は遠藤周作の小説を原作とした「沈黙」でしたが、あれは監督の作品の中でも色々と異例でしたよね~

 

今回のアイリッシュマン」は、技術や製作の面で新たなチャレンジを取り入れつつも彼の集大成とも言える作品と評判が高いです。

 

全編三時間三十分の超大作ですが、観る価値は絶対にアリ!!

この映画をオススメする人

  • スコセッシ監督作品のファン
  • マフィア映画好き
  • NETFLIX作品好き
  • アメリカンなブラックユーモアを楽しみたい方

あらすじ

全米トラック運転組合のリーダー:ジミー・ホッファの失踪、殺人に関与した容疑をかけられた実在の凄腕ヒットマン:フランク“The Irishman”・シーランの自伝的物語。全米トラック運転手組合「チームスター」のリーダー、ジミー・ホッファの不審な失踪と殺人事件。その容疑は、彼の右腕で友人の凄腕のヒットマンであり、伝説的な裏社会のボス:ラッセル・ブファリーノに仕えていたシーランにかけられる。第2次世界大戦後のアメリカ裏社会で、ある殺し屋が見た無法者たちの生き様が描かれる。

感想

ちょこっと解説

この映画は2004年に発表されたチャールズ・ブラントのノンフィクション小説「I Heard You Painted Houses」が原作となっています。 

スコセッシ監督はこの本に出会って感銘をうけ、長らく構想を練っていたそうです。

 

この本は、アイルランドアメリカ人であり、イタリアンマフィアのために暗殺者を務めたフランク・シーランという男の回想録という形をとっています。

そして、冒頭の「家をペンキで塗った」というのは俺がジミー・ホッファを殺した」という自白の暗喩なんですね。

 

ジミー・ホッファって誰?

 「いや、そもそもジミー・ホッファって誰?」という話ですが……

彼は労働組合指導者として、60年代のアメリカで非常に人気の高かった人物です。

作中でも「ビートルズと同じく、彼の名を知らない者はいなかった」とまで言われています。

そんなジミーですが1975年の7月にデトロイトで突然消息を絶ってしまったのです。

警察も捜査しましたが結局見つからず死亡扱いに。マフィアとかなり深くかかわっていたことから「ギャングに殺されたのでは?」と推測する人もいます。

 

労働者層(特に男性)に支持されたこと、マフィアと繋がりを持っていたこと、また演説での喋り方といい、今のトランプ大統領を彷彿させるところがありますね~

 

他にもケネディ大統領(アイルランド系)とイタリアンマフィアとの繋がりなど、アメリカ史の裏側をさくっと見せてくれている本作。

観た後に色々調べると面白いですよ~

77歳のおじいちゃんの挑戦

これまでに数々の名作を世に送り出してきたスコセッシ監督。今年のアカデミー賞授賞式のポン・ジュノ監督のメッセージからもわかるように多くの人々に愛され尊敬されている映画人であります。

 

それだけに自分のこだわりや映画への愛も人一倍なスコセッシ監督ですが、本作では新たな試みに挑戦しています。

 

まず本作はNETFLIXオリジナル映画であり、劇場公開されなかったこと。(監督が、「本作は家の小さいテレビで何度も観るために作った」と言っています。)

 

その代わり、全編三時間三十分、製作費1億5千万ドル超えという条件をNETFLIX側がのんでいます。

また、俳優たちを若返らせるためにILM製の特殊なカメラを使って撮影し、あとからCGで映像を加工しているんですね。

作中ではかなりの時間が経過するのですが、キャラクターが徐々に老いていく様子を自然に再現しています。

ただ、顔は若返っても体の動きに老いを感じるところが改善の余地ありですね。

 

 

アホなのにプライドの高い男たち

本作にはいろ~んな実在のマフィアや政治家の男性が出てくる訳ですが、彼らを全くカッコよく描いていません。

 

主人公のフランクはラッセルとジミーという二人のボスの間で右往左往するのですが、いつもイマイチ自分の立ち位置がわかってなくてアホっぽいです。そのくせ、マフィアとかかわりを持った途端、家族のためと称して一般人に暴力をふるうようになります。

(そんな父親をいつも冷ややかに見つめる娘のペギーが印象的でしたね。)

 

ジミー・ホッファにしても、自分もマフィアの助けを借りて勢力を拡大してきたのに、相手から何度「最終通告」をされても自分の地位と繁栄は揺るがないと信じてる。

 

そしてラッセル。マフィアの親玉として長年裏社会を牛耳っていましたが、結局刑務所のなかで寿命を迎えるのでした。

 

その他の連中も初登場の際に頭の上に死因が表示されちゃ全然威厳なんかありません笑。

 

「監督と出演陣が語るアイリッシュマン」でスコセッシ監督は「技術はどんどん進歩していくが、大事なのはキャラクターだ。」と言っています。

 

一人一人のキャラクターの人生を濃密に、けれど皮肉たっぷりに描いた本作に、そんな監督の映画作りの姿勢を感じることができました。

映画「アリー スター誕生」を観て~二人のスターが創った奇跡~

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(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC


こんにちは~チェリーです。

今回は映画「アリー スター誕生」を紹介します。

 

主演は皆さんご存知Lady GAGA。もう一人の主役かつ監督をつとめるのがブラッドリー・クーパー

 

実はこの映画はリメイク。オリジナルは1937年にウィリアム・A・ウェルマンが監督したドラマ映画。一組の男女が恋に落ちますが、一方はスタ―へと駆け上がっていくのに対し、もう一方はスターの座から転落していくというハリウッドの光と影を描いたストーリーになっています。

 

1954年にはジュディ・ガーランド、1976年にはバーブラストライドサンドという名だたるスターに演じられてきたヒロインを今回はレディーガガが演じます。

 

そしてスター人生の終わりと愛の間に苦しむ男ブラッドリー・クーパーが熱演。

セックス・アンド・ザ・シティ」や「ハングオーバー」、「アメリカンスナイパー」など日本でも有名な作品にも数多く出演し、幅広い演技をみせる名優です。

 

才能あふれる二人のスターによって激しい恋と音楽に彩られた名作に仕上がっています。

 

まだ観ていない映画好き、音楽好きは要チェックです!!

 

 

基本情報

 

あらすじ

カントリー歌手のジャクソン・メインは音楽で成功したものの、今はドラックと酒におぼれる生活を送っていた。

ある日、偶然立ち寄ったバーで歌うウェイトレス・アリーの才能に引かれたジャクソンは彼女を自分のコンサートに起用する。最初は断るアリーだったが彼の熱意に押されて出演。二人のデュエットは観客から喝采あびる

これを機に二人の距離は縮まり恋に落ちる。またアリーはスターとしてのキャリアを駆け上がっていくが、ジャクソンはカントリーからポップへの彼女の転身をよく思わず、ますます酒浸りになっていく。

徐々にすれ違っていく二人の間に、やがて取り返しのつかない悲劇が訪れ……

感想

二人の「本物」が創った奇跡のスター映画

実は私、前々から歌手としてのガガ様の大ファンでした。一人の人間としても、その志や言動はカッコいいし、見習うところの多い人だと思います。

 

しかし演技をやってる彼女を見るのは今回が初めて。「大丈夫かな?」と思う気持ちも正直ありました。

 

ところが、そんな心配は全くの無用。むしろ私なんかが想像していた以上に素晴らしい作品に仕上がっていました。

 

楽家としてのジャックとアリーのデュエットが素晴らしいのはもちろん、バーの楽屋や駐車場で二人がお互いを知っていくシーンや、風呂場での口喧嘩のシーンが本当にリアル。ドキュメンタリーを観ている気分になってくるくらいでした。(あのシーンをはじめ、本作はアドリブも多いようです。)

 

アリーの役作りにカガ自身の経験ももちろん影響したでしょうが、「アリー」と「レディーガガ」を一緒くたにはしていません。

 

ブラッドリー・クーパーに関しても同様。聴力の衰えや実の兄との確執に悩み、自暴自棄になっていくジャックを自然に演じていました。(彼自身、キャリア初期にジャックと似たような状態にあったそうです。)

 

あれほどの才能とカリスマ性のある二人が、現実の自分たちとは違った「スター」をスクリーンの中に作り上げたのがすごいです。

圧巻のパフォーマンスの数々


Lady Gaga, Bradley Cooper - Shallow (From A Star Is Born/Live From The Oscars)

 

本作を象徴する名曲「Shallow」。アカデミー賞でのパフォーマンスも素敵でしたね。

二人だけの世界がステージの上で再現されていました。

 


Lady Gaga, Bradley Cooper - Shallow (from A Star Is Born) (Official Music Video)

 

 


Lady Gaga - Always Remember Us This Way (from A Star Is Born) (Official Music Video)

 

スターとして、恋人同士として幸せそうな二人の笑顔が良いですよね。

この歌はガガ本人が作詞作曲に携わっているそう。サビ前の力強い歌い方が確かに彼女らしいですよね。


I'll Never Love Again (from A Star Is Born) (Official Music Video)

 

そしてこのラストソング。

ジャクソンを失い打ちひしがれていたアリーが再びステージに立ち、彼への想いを歌で表すシーンです。

 

ジャクソン(にあたる役)の死因は映画によってバラバラですが、今回は自殺

止められなかったアリーの深い後悔や未練、彼への愛が歌詞から伝わってきてとても悲しいですが、それすらも音楽という形で昇華するスターとしての生きざまが集約された曲になっています。

 

映画を語る音楽

音楽がメチャクチャ良いのでサントラも買ってみました。

 

 

  • 01.イントロ(0:20)
  • 02.ブラック・アイズ(3:03)
  • 03.サムホエア・オーヴァー・ザ・レインボー (ダイアローグ)(0:42)
  • 04.ファビュラス・フレンチ (ダイアローグ)(0:19)
  • 05.ラ・ヴィ・アン・ローズ(2:59)
  • 06.アイル・ウェイト・フォー・ユー (ダイアローグ)(0:19)
  • 07.メイビー・イッツ・タイム(2:39)
  • 08.パーキング・ロット (ダイアローグ)(0:31)
  • 09.アウト・オブ・タイム(2:52)
  • 10.アリバイ(3:03)
  • 11.トラスト・ミー (ダイアローグ)(0:32)
  • 12.シャロウ~『アリー/ スター誕生』愛のうた(3:35)
  • 13.ファースト・ストップ、アリゾナ (ダイアローグ)(0:10)
  • 14.ミュージック・トゥ・マイ・アイズ(3:19)
  • 15.ディギン・マイ・グレイヴ(3:57)
  • 16.アイ・ラヴ・ユー (ダイアローグ)(0:19)
  • 17.オールウェイズ・リメンバー・アス・ディス・ウェイ~2人を忘れない(3:30)
  • 18.アンビリーヴァブル (ダイアローグ)(0:28)
  • 19.ハウ・ドゥ・ユー・ヒアー・イット? (ダイアローグ)(0:14)
  • 20.ルック・ホワット・アイ・ファウンド(2:55)
  • 21.メンフィス (ダイアローグ)(0:24)
  • 22.ヒール・ミー(3:16)
  • 23.アイ・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ(2:57)
  • 24.ヴァウズ (ダイアローグ)(0:17)
  • 25.イズ・ザット・オールライト?(3:11)
  • 26.SNL (ダイアローグ)(0:13)
  • 27.ホワイ・ディド・ユー・ドゥ・ザット?(3:04)
  • 28.ヘアー・ボディ・フェイス(3:22)
  • 29.シーン98 (ダイアローグ)(0:35)
  • 30.ビフォア・アイ・クライ(4:18)
  • 31.トゥー・ファー・ゴーン(1:26)
  • 32.トゥウェルヴ・ノーツ (ダイアローグ)(1:03)
  • 33.アイル・ネヴァー・ラヴ・アゲイン (映画ヴァージョン)(4:41)
  • 34.アイル・ネヴァー・ラヴ・アゲイン (エクステンデッド・ヴァージョン)(5:28)

こちらが本作のサントラの中身。

全編70分、曲数31の大ボリュームです。

特徴的なのが、合間に劇中のセリフが入っているところ。音楽を堪能しながら、映画を追体験できるのです!もう最高ですよ~

 

聞いてると、二人の出会い、ジャックとアリーが頭を突き合わせて歌うシーン、ジャックがガレージで一人最後を迎えるシーンなどが頭に浮かんできてエモーショナルになります。

はてなブログ無料版でGoogleアドセンスに合格!!必要な準備とは?(2020年6月)

こんにちは~チェリーです。

 

さて、このブログを読んでくださってる方の中にはお気づきの方もいるかもしれませんが……

この度はてなブログ無料版でGoogleアドセンスに合格しました!!

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待ち望んでいたこのメールが届くと結構嬉しい!!さっそく広告を貼り付けました笑

 

それにしてもここまで色々しなきゃいけないことがあってかなり面倒大変でした~

応募する前に自分で何が必要なのかネットで調べたのですが何せ皆さん言っていることがバラバラで……。ブログ超初心者の私にはどれが正しいのかよく分からず困りました。

 

なので今回は私の失敗と合格の体験をふまえて、はてなブログ無料版でGoogledアドセンスに受かるために必要なことをまとめたいと思います。

 

私と同じくブログ初心者の方や、これからアドセンスに応募しようとおもっている方の参考になれば幸いです。

 

 

はてなブログヘルプをよく読む

help.hatenablog.com

 

まずはこのはてなブログ公式のヘルプにしっかり目を通しましょう。

基本的にこのヘルプの流れにそって応募をすることになります。

 

必須なのは

  • プライバシーポリシーの設置
  • お問い合わせフォームの設置(グーグルフォームで無料で作成できます)
 
私は以下のサイト様を参考にさせていただきました。
 
 

  Adsenseヘルプを読んで記事を見直す

必須コンテンツ - AdSense ヘルプ

 

サイトのページが AdSense のご利用条件を満たしているか確認する - AdSense ヘルプ

 

はてなブログのヘルプにも書いてある通り、上のAdsenseヘルプをよく読んでおきましょう。

特にサイト運営者向けポリシーに記載されている禁止コンテンツや不正コンテンツに違反していると合格できませんのでご注意ください。

 

もし「不正なコンテンツ」が理由で審査に落ちた場合にも、アドセンス側はどの記事が違反しているのか教えてくれません。

 

見直しが楽になるように、アドセンス申請は記事が少ない段階ですることをオススメします。

 

 グーグルサーチコンソールに登録する!

はい、私はこれが抜けていたせいで審査に落ちました笑。

 

正しい手順で申請し、コンテンツに問題がなくてもサイトや記事の存在をGoogleに認知してもらわないとアドセンス審査に受からず、Google検索結果にも表示されません。

 

なのでブログをはじめたらすぐにグーグルサーチコンソールに登録

を行いましょう!

やり方は以下のサイト様を参考にして下さい

 

これははてなブログのヘルプに書いてないので最初は知らずに苦労しました……。

(「サイトの停止または利用不可」となっててビックリしました(*_*))

 

 申請しよう!!

ここまで出来たらあとは申請するだけ!!

上のはてなブログのヘルプに従って申請を行いましょう。

 

私は一回目の申請で落ちた後、サーチコンソールで記事を登録しインデックス登録が完了されたのを確認して再び申請し合格しました!

 

それでも落ちてしまったという方も、はてなブログのヘルプこのサイト様に対処法がまとめられているので焦らずに再びチャレンジしてみてください!!

 

以上、私の体験をふまえてまとめてみました。

少しでも助けになれば幸いです。

それでは~

 

映画「クレイジー・リッチ!」の紹介と感想 

こんにちはーチェリーです。

今回はシンガポールが舞台となる映画「クレイジーリッチ!」を紹介します。

 

シンガポールといえば日本人にも旅行先や移住先としてとても人気の高い場所。(このパンデミックが収まったら旅行にも行きたいですね~)

去年のコナンの映画の舞台にもなってましたね。

 

けれどその文化や歴史、民族についてはよく知らない人が多いのではないでしょうか。

 

原題からわかる通り、本作は製作陣、役者ともにアジア系で揃えたという、ハリウッドにしてはかなり珍しい作品。

 

ストーリーは結構ベタなのですが、それが「アジアン」ネタと絡み合って今までにない仕上がりになっています。

 

はっちゃけたセレブっぷりも、魅力たっぷりの出演陣も、そしてその中に隠されたメッセージも楽しめる作品。

 

ぜひご覧ください!

 

基本情報

あらすじ

レイチェル・チュウは中国系アメリカ人で、ニューヨーク大学の経済学科の教授を務める優秀な女性。ある日、恋人のニック・ヤンのいとこの結婚式に出るため彼の故郷のシンガポールへ行くことに。

ところがニックのとった飛行機の座席はファーストクラス!シンガポールに到着後、大学時代の友人ペク・リンに再開したレイチェルは、彼女からニックの実家がシンガポール1の資産家だという事実を聞かされる。

そんなニックがレイチェルを家族に紹介すると、レイチェルは周りのセレブたちの注目と嫉妬の的になってしまう。おまけにニックの母たちは「アメリカ人」のレイチェルがニックの相手となることを快く思っていないようで……。

感想とちょこっと解説

リッチすぎるよこの一家

いや~、ニックの実家大きすぎるでしょ!!家というより城っていう感じ笑

(あの建物は実際はマレーシアにあるそうです。)

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出典 https://theculturetrip.com/asia/malaysia/articles/7-malaysia-locations-filmed-in-crazy-rich-asians/

 

 作中でペク・リンが説明したところによると、ニックの一家は十五世紀ごろから移住いわゆる「(中華系)プラナカン」のようですね。中国本土や東南アジア全域にコネクションを持ち、今では世界中に財産がある名家ですね。

 

一族は皆事業をやってたり、芸能界で活躍していたりするセレブばっかり。

毎日のように家でパーティーをやったり、自家用ヨットやヘリで近くの島まで遊びにいったりとまさにクレイジーなリッチぷり。(いいなあ、私も早く海でバカンスを過ごしたい笑)

 

まあいいことばかりでもなく、周囲の注目や嫉妬を常に集めるせいでレイチェルはひどい目にあうのであうのですが……。

 

批判から読み解く「アジアン」の意味

批評家や観客から絶賛された本作ですが、実はイングランドとマレーシアにルーツを持つヘンリー・ゴールディングが中国系シンガポール人を演じることに対しての批判も結構ありました。(日系イギリス人のソノヤ・ミズノに関しても同様。)

 

また「本作の中心は裕福な中国系のシンガポール人で描写が偏っている」「ほとんどのキャストがアメリカ英語かイギリス英語を使っていてシングリッシュ*1が使われていない」という批判も……。

 

批判にも一理あるとは思います。これまでのハリウッドでの「アジアン」の扱われ方を見るとどうしてもちょっと警戒心がわいちゃいますし。

 

ただ前述したように、これはプラナカンの主人公とその周囲の人のお話で、けっして「全てのアジア人を代表して書いたもの」ではないんですね。

 

ヘンリー・ゴールディングシンガポールでも活動していますし、イングランドで育った彼自身も「アジアン」としての自分のルーツに悩んだことはきっとあっただろうと思います。

 

英語も話せないままアメリカに逃れてきて一人で娘を育てたレイチェルの母。

欧米で自分たちへの差別的な視線を感じつつも勉学や事業に努力したニックの母。

中国系だけどアメリカで生まれ育ち、シンガポールの土地で戸惑うレイチェル。

 

どの「移民」や「アジアン」にもそれぞれ歴史や苦労があるのですよね。

 

ラストでニックが飛行機の中の様々な民族の人とすれ違うシーンはそんな「アジアン」やシンガポールという国の象徴かもしれませんね。

原作は?

 

 

 

 

 
原作はシンガポール出身のアメリカ人ケヴィン・クワンによる英語小説。
三部作なので映画も続編が作られる可能性大ですね。
 

キャスト

ヘンリー・ゴールディング

イングランド人の父と、マレーシアの先住民イヴァン族の母を持ちます。

マレーシアで生まれ、8才からイングランドで育ち、大人になってから自らのルーツを探ろうとマレーシアに戻りテレビなどで活躍するようになりました。

それまではなんと理容師だったとか!今でも共演者の髪をカットしてあげたりするそうです。

演技に挑戦したのは本作が初めて。これを機に他の映画にも出演するようになり、2019年にはエミリア・クラークと「ラスト・クリスマス」で共演するなどキャリアを広げています。

 笑顔が素敵ですよね~

台湾出身の美人な奥さんがいます。

 

 

コンスタンス・ウー

台湾系アメリカ人。バージニア州出身。

女優としては下積み時代が長かったものの、2015年からコメディドラマ「Flash Off the Boat」に出演して知名度をあげました。

本作でさらに人気をあげ、2019年には映画「ハスラーズ」で主演。豪華な共演陣に囲まれつつも魅力を放っています。

動物好きで自分のインスタにもウサギの写真をアップしています。(かわいい!)

 

 

ミシェル・ヨー

言わずとしれたアジア系女優の大御所。中国系マレーシア人。

ミス・マレーシア、アクション俳優、ボンドガールというものすごい経歴の持ち主です。

本作では一筋縄ではいかない鋭さを持ったニックの母エレノアを演じていました。

この後「ラストクリスマス」でヘンリー・ゴールディングと再び共演を果たしています。

 

オークワフィナ

中国系アメリカ人と韓国系アメリカ人のハーフ。本業はラッパー。

www.youtube.com

オーシャンズ8」などの話題作に出演し、2019年の主演映画「フェアウェル」ではゴールデングローブ賞を受賞するなど女優としてもバリバリ活躍中。

 

父親役は「ハングオーバー」で有名なケン・チョン。コメディアンとしての印象が強い彼はもともと医者なんですね!

 

*1:シングリッシュ Singlishとはシンガポールで話される独特な英語のこと。どんな感じか気になる人はNETFLIX「シンガポール・ソーシャル」をチェックしてみてください!

映画「スノーピアサー」~今の世の中はこの列車のようではないと言えるのか?

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出典 https://eiga.com/movie/78218/gallery/

第92回アカデミー賞

今回も数々の話題作、名作が並ぶ中、一際注目を集めた作品がありました。

それが韓国出身のポン・ジュノ監督による新作「パラサイト」です。

第72回カンヌ映画祭ではパルムドールを受賞し、アカデミー賞では6部門にノミネートされました。

しかし非英語圏の作品であることから「国際長編映画賞はとれても作品賞はないだろうな~」という声も多数きかれました。

 

ところが結果は作品賞、監督賞を含む4部門を受賞!!非英語作品としては初の快挙となり映画史に残る記録となりました。

 

そんなポン・ジュノ監督が2013年にハリウッドで制作したのが今回紹介する「スノーピアサー」です。

 

「パラサイト」と共通する「格差」というテーマを持ちながらも、「パラサイト」とは若干異なる見せ方をしてきます。(詳しくは後述)

ポン・ジュノ監督がソウルのコミックショップで偶然原作に出会いほれ込んで映画化を持ちかけたという本作。

やはり彼はこういったテーマに深く関心があるのでしょうね。

 

原作はフランスのグラフィックノベル「Le Transperceneige」

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出典 https://www.theverge.com/2014/1/28/5335822/snowpiercer-english-debut

Netflixでドラマ化されており、5月25日から配信開始します。

www.netflix.com

すでにシーズン2の制作も決まっているもよう。

virtualgorillaplus.com

この記事をよんで気になった人はぜひNETFLIXに加入して観てくださいね!

 

基本情報

あらすじ

2014年、地球温暖化を防止するため78カ国でCW-7と呼ばれる薬品が散布されるが、その結果、地球上は深い雪に覆われ、氷河期が再来してしまう。

それから17年後、かろうじて生き延びた人々は「スノーピアサー」と呼ばれる列車の中で暮らし、地球上を移動し続けていた。列車の前方は一握りの上流階級が支配し、贅沢な生活を送る一方、後方車両には貧しい人々が押し込められ、厳しい階層社会が形成されていた。

そんな中、主人公のカーティスと仲間たちは自由を求めて反乱を起こし、前方車両を目指すが……。

感想

ポン・ジュノワールド全開!痛烈に描かれる社会

17年前に地球が凍り付いてから、生き残った人類は巨大な列車にのって終わらない旅を続けています。

しかしまともな暮らしをできるのは一部の人々だけ。貧しい人々は列車の後方に押し込まれ、巡回に来る兵士に逆らおうものなら拷問や死刑にかけられます。

主人公カーティスと仲間たちは何度も反乱を起こしましたがその度に鎮圧されてきました。しかし、後方車両から子供たちまで連れ去られこれ以上はもう耐えられない状況に。

今回の反乱には、後方列車一体となって前方車両へのドアを突破し、列車の設計者であり最高権力者のウィルフォード氏を倒そうとしますが……。

そして密かにカーティス達にヒントを書いたメッセージを送ってくる人物の正体とは……!!

 

ポン・ジュノ監督といえば韓国の映画人の中でも一風変わった独特の作風で有名です。

この映画はフランスのグラフィックノベルが原作であり、ハリウッドの俳優を起用して作られましたが、やはり彼の作品らしい「(現実の)社会風刺」という要素は随所に見られます。

 

終盤、連れ去られた子供たちが欠損した列車のパーツの代用品として働かされていることがわかります。また、謎の支援者の正体やウィルフォード氏による支配構造の本当の姿が明らかに……。

このシーンはチャップリンの「モダン・タイムズ」を彷彿とさせます。子供たちが自我を見失い完全に歯車になったように、カーティス達も列車という社会の中で操られる部品に過ぎない。

人口が増えすぎなように定期的に「間引き」させ、自分たち権力者の周りは武装組織で守らせる。

この武装組織(警察)の立ち位置がカーティス達より「前」だけど、富裕層の車両よりは「後ろ」にあるというのがなんとも皮肉ですね。

 

あと、クロノールの匂いに思わずうっとりしちゃうところとか、戦闘になる直前新年を迎え武装組織も「ハッピーニューイヤー」と無邪気に喜んでしまうところとか、シュールなギャグが突っ込まれているのもポン・ジュノ監督らしかったですね笑

 

 

「縦」と「横」の格差社会

「パラサイト」では高低差を巧みに利用し、「縦」の格差社会を演出していました。

「スノーピアサー」では列車という「横」の社会の中でその格差を描いているんですね。

共通するのは、その格差の構造から抜け出すのはやはり簡単ではないということ。

そして搾取する側はその構造に無意識ですらあるという冷たい現実です。

 

それを象徴するのが前方車両の子供たち(列車のなかで生まれ育ち外の世界を知らない世代)の授業のシーン。こうやって育った子供たちが将来この社会構造を変えようとするとは到底思えないですよね……。

 

この映画を観た人は「パラサイト」も観て比較すると面白いのではないでしょうか。

キャスト陣の熱演

まずは主演のクリス・エヴァンスオクタヴィア・スペンサーと合わせて「Gifted」の二人笑)。

反乱のリーダーとして常に冷静ですが、過去の自分の行いに消えない罪悪感を持っているカーティスの苦悩がよく出ていました。

 

そしてれポン・ジュノ映画ではお馴染みのソン・ガンホ。クロノール中毒のエンジニアで、コ・アソン演じる娘のヨナと共に列車内の案内役を務めるミンスを演じます。

序盤はコメディリリーフ 的な存在でしたが、彼がカーティス達に協力する本当の理由が明らかになります。

 

そしてこの映画でトロント映画批評家協会賞で助演女優賞を受賞したティルダ・スウィントン

彼女自身は神秘的で中性的な容姿とオーラを持った人でそれを生かした役も多いですが、この映画ではメイソン大佐というメッチャむかつく嫌な女でしたね笑。本当に、カメレオン女優という言葉のあった役者さんです。

 

他にもアンドリュー役のユエン・ブレムナー(あの氷漬けのシーンは観ているこっちが苦痛なくらいでした)、ギリアム役のジョン・ハートなどの演技も素晴らしかったですね。

 

まとめ

今回は映画「スノーピアサー」をご紹介しました。

完璧とは言えずとも、原作の作られたフランスでも評価の高かった本作。

「パラサイト」を観て他のポン・ジュノ監督作品が気になった方、Netflixのドラマ版が気になる方などもぜひチェックしてくださいね。

それでは~

ドラマ「The Witcher ウィッチャー」 NETFLIXによる新たなダークファンタジーが開幕!!

2011年からHBOが制作したファンタジー大河ドラマゲーム・オブ・スローンズ

全世界で絶大な人気を誇り、昨年最終シーズンを迎えました。

 

そんなHBOに負けじとNETFLIXも新たなファンタジードラマを昨年12月に配信しはじめました。

その名も「ウィッチャー」

原作はポーランドの作家アンドレイ・サプコフスキによる小説シリーズ。

「ウィッチャー」は2007年からはゲーム化もされ、かなり高い評価を受けています。

(このドラマシリーズはゲームの話の前日譚にあたります。ゲームをやった人が見ても楽しめますよ。)

 

地元のポーランドではすでに国民的な人気を誇り、式典には大統領が登場したほどだとか。

 

「打倒!ゲーム・オブ・スローンズ」という気合十分なことが制作陣のインタビューからもひしひし伝わってくるなかなか豪華な仕上がりとなっている本作。

 

ゲーム・オブ・スローンズはすごく面白いらしいけど、8シーズンもあるから今更おいかけるのはな~」という人も、今「ウィッチャー」を観れば新しい流行を先取りできるかもしれませんよ!笑

 

一緒に新しいファンタジーの波に乗っかりましょう!

 

 あらすじ

魔法の存在するこの世界では、国家間や種族間の争いが絶えない。揺れ動く情勢の中、孤独な戦士であるウィッチャー・ゲラルト、暗い過去を持つ女魔法使い・イェネファー、滅亡したシントラの王女・シリの運命が交差し、世界に大きな影響を与えていく。

ちょこっと解説 世界観と用語

序盤から結構色んな名前やら設定やら出てくるのでウィッチャー初心者は混乱するかも。なので軽くまとめておきます。

 

世界観について

 

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画像出典 https://www.witchernetflix.com/en-gb

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画像出典 https://kaigaidramablog.com/wicher/witcher-map/

舞台となるこの大陸には昔エルフとドワーフが暮らしていて、対立や争いもおこっていました。

しかしのちに人間が侵入し入植を進めた結果、現在は人間による国家がいくつか存在しています。

エルフやドワーフたちの集落も点在しているようですが、人間に虐殺されたり奴隷として扱われる種族もいます。(シリを助けてくれた難民の少年の家のドワーフもそうでしたね……。)

 

作中に出てくる主な国家は「ニルフガード」と「シントラ」です。

「ニルフガード」は皇帝エムヒルが統治する南方の大国で、急速に北方へ領土をひろげるための侵略をおこなっています。

皇帝エムヒルの正体とその目的がこの物語の一つのカギですね。

 

「シントラ」は大陸中部の王国で、シリの故郷です。「雌獅子」と呼ばれる女王キャランセ(シリの祖母)によって治められていましたが、第一話でニルフガードから攻撃され陥落してしまいます。

 

用語説明

魔法使い(sorcerer)

世界中から魔法の素質のある人が集められ、「アレツザ」という魔法学校で集団生活をしながら魔法の修行をします。そうして一人前となった魔法使いを統括するのが「魔法協会」です。

基本的に各国から独立した立場である魔法協会ですが、それぞれの国に魔法使いたちを派遣したり、必要なら援護を行うこともあります。

主人公の一人イェネファーは学長のティサイアに見込まれ、魔法使いになっていきます。

 

ウィッチャー(witcher)

 

ウィッチャーとは魔法を使った格闘術で魔物を倒す戦士たちの呼び名です。

ウィッチャーたちは素質のある子どもを訓練し、最終的に変異させて(ミュータントにして)一人前にします。しかしその変異を行うことが出来なくなったため近年数は減ってきている模様。その能力や謎の多さから一般人からは基本的に敬遠されます。

ちなみにウィッチャーには男しかいません。

主人公の一人ゲラルトもウィッチャーの一員です。

 

 

感想

これはまだ序章にすぎない

本作が特徴的なのは「主人公三人の時間軸が異なる」という点です。

 

ウィッチャー初心者は最初の方はかなり混乱すると思います。

イェネファーの物語はシリの物語の60年ほど前、ゲラルトの物語はシリの物語の30年ほど前からスタートしてるんですね。

第三話でそれが明らかになり、最終話でゲラルトがシリに会合します。

 

 つまり、ここからやっと本編がはじまるという感じです。めちゃくちゃ壮大ですよね~

お金かけてるだけあって、ファンタジーらしい映像美は圧巻です。特に最終話のソドンの砦の戦いのシーンとかゾクゾクします。

 

ただ正直あんなにセックスシーンいる?と思っちゃいました。話の筋とほぼ関係ないし……。

視聴者へのサービスなのか、ゲーム・オブ・スローンズを意識しすぎなのか笑。

続編決定!!

シーズン2の制作はすでに決定しています!2021年にNETFLIXで配信開始されます。

 

news.denfaminicogamer.jp

ゲームとのつながりは?

 

 
ウィッチャーのゲームシリーズは原作小説の後日譚に当たります。
このドラマのシーズン1の原作は本編小説ではなく「The Last Wish」と「Sword of Destiny」という短編です。
もともとキャラを深堀りするためのものだったエピソードをつないだものになっているんですね~
 
ゲームをする前にある程度ウィッチャーの世界や歴史について知っておいたほうがいいそうなので、そんな時はこの本を読んでみてください。
 
怪物の種類やゲラルトの歩みまでまとめられていて非常にわかりやすいです。

登場人物とキャスト

ゲラルト(ヘンリー・カヴィル

”Hmm……”が口癖のわれらが主人公。

屈強なウィッチャーであり、行く先々で怪物退治をしては報酬をもらう放浪生活をしています。口数も少なく無表情ですが、愛馬のローチに話しかけたりする意外とお茶目な一面もあります。

旅の途中で、「ブラビケンの殺し屋」という物騒な二つ名を賜ったり、吟遊詩人のヤスキエルや魔女のイェネファーやトリスなどと知り合ったりします。

ヤスキエルと訪れたキャランセ女王の娘パヴェッタ王女の求婚式で、後にシリの父となる青年ダニーを助け、お礼したいといわれた結果しぶしぶ「驚きの法」*1を要求します。

するとその時パヴェッタが妊娠していることが発覚。こうしてシリと運命が結ばれることに。

キャストのヘンリー・カヴィルはスーパーマン映画やミッション・インポッシブルの出演で有名。2020年には映画「エノーラ・ホームズの事件簿」に出演します。

 

 

 

イェネファー(アーニャ・シャロトラ)

エイダン出身の魔女。生まれつき背中と顎の骨が曲がっており、村人からも家族からもひどい扱いを受けていました。

ある時ティサイアにその資質を見込まれ、アレツザで魔法使いになる訓練を受けていきます。やがてある代償を払って、美しい容姿と力を手に入れるのでした。

実の父はハーフエルフ。これが彼女の魔力と関係あるのかも……?

ゲラルトとイイ感じですが、イマイチ彼を信用できない模様。その生い立ちゆえか根底では「愛したい、愛されたい」という気持ちの強い女性です。

 

演じるアーニャ・シャロトラは新人女優。ドラマ「ワンダーラスト」などに出演経験があり、大きな役は本作が初めてです。父親はインド人、母親はイングランド人で、エキゾチックな美貌が目をひきます。

シリ(フレイヤ・アーラン)

シントラの姫で、ゲラルトの「驚きの法」の相手。

両親はすでに事故で亡くなったとされており、祖父母に育てられました。

シントラが陥落した後は祖母のキャランセ女王の遺言に従い、ゲラルトを探す旅にでます。途中でエルフの少年ダーラに助けられたり、ドリュアスの森に迷い込んだり、知り合いの魔法使い(に変装した追手)についていったりと忙しい。

母のパヴェッタと同様に魔法の素質がある模様。

 

演じるフレイヤ・アーランは19歳(2020年五月時点)の新人女優。ショートフィルムなどにちょこちょこ出演していましたが、本作でメインキャストの一人に大抜擢だれました。

シリは物語の時点で12歳の設定ですが、キャストのフレイヤはイェネファー役のアーニャと5歳しか違わないんですね笑。でもちゃんと子供に見えるのがすごいです。

*1:「驚きの法」とは、「相手が知らないうちに手に入れたもの」をもらう約束のこと

漫画「ニュクスの角灯」~心に明かりを灯す物語~

 

 

漫画「ニュクスの角灯」が手塚治虫文化省「マンガ大賞」受賞!おめでとうございます!

 

ということで、まだこの漫画を知らないかたのためにその魅力を紹介しようと思います。

 

舞台は日本に諸外国の最新の文化や技術が流れ込んできた明治時代。

主人公の少女美代が、先進と享楽の都パリからやってきた夢の品々に触れ、少しづつ変化し成長していく様を描いた、美しく切ない人間ドラマです。

華やかでロマンチックな雰囲気をまとった本作ですが、時折現代の私たちにも通じる鋭い目線を感じさせます。

 

作者の高浜寛はキャリア初期から海外(特にフランス)での評価の高かった方で、画風や作風も独特なタッチがあります。

 

このマンガを読んで皆さんも新しい漫画の世界に触れてみてください!

 

 

あらすじ

1878年

西南戦争で父を亡くした少女美代は、叔父夫婦の家のある長崎に引き取られたが、引っ込み事案な性格もあってなかなか暮らしに馴染めない。

ある時、美代の不思議な能力を見込まれ、輸入物店「蛮」で働くことに。

一風変わった店主の百や周りの大人たちと交流するうち、美代の人生は大きく変わっていって……。

 

触れた物の未来が見える 不思議な少女と、先進と享楽の都・パリから やってきた夢の品々を巡る、豊潤なる人間ドラマ。

感想

「美しく楽しかった時代」

この物語は1945年の熊本の空襲シーンで始まり、1878~1879年の長崎とパリでの出来事を描いた後、最終的に再び冒頭の時代へと戻ります。

 

作者の高浜寛は、取材中に出会った長崎のアンティークショップから、この物語の着想を得たそうです。幕末から明治にかけて流れ込んできた品々に触れて、若い女性が成長する楽しい話にしよう、と。

 

しかし、長崎そして熊本という土地柄、彼女の人生には戦争による影が投げられたはずであり、それを無視して「楽しい話」をかくことはできないと思ったそう。

 

なので晩年の美代が過去を回想するという構成をとったのですね。

 

高浜寛のレトロな画風がノスタルジックな物語にマッチしていて、その分切ない気持ちにさせられます。

 

個性豊かな登場人物たち

 

最初、美代は親を亡くした自身のない少女にすぎませんでした。

「何か役に立たないと意見をきいてもらえない」と思い込んでいて、なかなか心を開けない。

その美代が、色々な品物に出会い、人間味のあふれる周囲の大人たちに背中を押され、自ら海外へと飛び出す決意をするまでになるんですね。

後に「蛮」で働くことになった少年・民平に指導し、憧れられる立場になるところからも彼女の成長が感じられます。

他の人に幸せの手助けをできるようになった美代の人生が、1879年以降も幸せなものであったことを願いたくなります。

 

その美代の人生を大きく変えたのが「蛮」の店主の百でした。

少々複雑な生い立ちを背負い、悲しい恋を引きずっている彼ですが、普段はそんな素振りを見せず飄々と振舞っています。

途中から彼がもう一人の主人公をなって、舞台はパリに移ります。

 

その他にも、強面だけど優しい百の養父の岩爺、百の実母で実業家の大浦慶、美代の姉御分となる・たま、高級娼婦としての生活に溺れるジュディットなど様々な大人が登場します。

 

皆それぞれに過去や悩みを背負っているのですが、それに静かに耐えて生きています。

彼らの人生が交差し、互いに影響を与える様が浮き出ているのもこの作品の特徴ですね。

 

文化の交差点・長崎から華の都パリへ

当時に市井の人々の生活や、海外に紹介された「ジャポニズム」の特徴まで、綿密な取材に基づいて描かれているのでとても面白いし勉強になります。

一般の市民にも洋服が出回り始めた経緯とか、浮世絵に当時の欧米人がかなり驚いていたこととか……。

 

長崎は古くから諸外国との貿易の拠点だったので、様々な文化が持ち込まれたわけですね。同じ時代でも、東京を舞台にした作品とはまた違った風情があります。

 

また、このころのパリは最先端の技術と文化が集まった場所ですから、欧米で人気の高まっていた日本文化を百たちがここに紹介するのも納得。

 

こういう作品を読んでいると、意外に日本の文化について全然知らないことがたくさんあると気づかされるのですよね~。

 

作者紹介

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出典 http://to-ti.in/product/nyx

作者の高浜寛熊本県天草市出身の女性漫画家です。

筑波大学芸術専門学群卒で、就活の時期に書いていた漫画「モン・サン・ミッシェル」で雑誌「モーニング」の佳作を受賞しました。

早くから海外で評価を受け、著作の多くはフランス語訳がでています。また、著名なバンド・デシネ作家のフレデリックポワレとのコラボ経験あり。

他の作品は「蝶のみちゆき」「四谷区花園町」「エマは星の夢を見る」など。

 

 

 

最新作は「ラマン」。フランスの作家マルグリット・デュラスの小説をコミカライズしたものです。1929年のフランス領インドシナを舞台に、現地の貧しいフランス人少女と、金持ちの華僑の青年の関係を描いた作品です。

 

現在の連載作品は「扇鳥歳時記」。

「ニュクスの角灯」「蝶のみちゆき」にも登場したたまの思春期を描いた話です。

今トーチWebで無料公開しているので気になった方はぜひよんでください!